また、訪日旅行者が真に求めているのはWi-Fiではなく「インターネット通信ができる環境」だと、山下さんは指摘する。
「空港などで格安のSIMカードをレンタルするほうがトータルの通信費が安く済むのであれば、Wi-Fiは必要なくなるかもしれません。設備を撤去した交通事業者は今後の通信技術の進展や環境の変化を見極めている、という面もあるのではないでしょうか」
先日、KDDIの大規模通信障害があった際、無料の公共Wi-Fiに救われた人もいたに違いない。大規模災害発生時の通信手段としてのWi-Fiの整備についてはどうだろうか?
「もちろん、利用者としてはどこでもWi-Fiが使えれば便利でしょう。しかし、国営のWi-Fiを張り巡らすのは現実的ではないので、やはり民間にお願いするしかない。ところが、いま交通事業者はコロナ禍でそれどころではなくなっている。特に私鉄は民間企業とはいえ、公共的な役割があるので、鉄道を縮小させたり、安易に値上げもできない。そうなるとWi-Fiのような付加サービスから見直さざるを得ないというのが現状でしょう」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)