「通信速度が速く、容量の大きなデータを送受信しやすい4G、5Gの通信システムが普及してきました。それによってWi-Fi自体のニーズが低下してきていると聞いております。さらに、弊社としては固定費の削減にもつながる、ということもあります」(東京メトロ)
Wi-Fi利用は「減っている」
都営地下鉄などを運営する東京都交通局は、2013年から都営バスで無料Wi-Fiを提供してきたが、昨年11月にサービスを終了した。
「NTTBPとの契約満了をもって、更新せずに終了することにした次第です」と、交通局の担当者は説明する。偶然なのか、東京メトロと同じ理由である。
その背景として挙げるのは、Wi-Fiサービスの利用者の減少だ。
「国内通信キャリアが格安で大容量の通信ができるプランを充実してきて、Wi-Fiが使われなくなってきたこと。さらに国内通信事業者と契約していない訪日外国人観光客が新型コロナの影響で減ったということも、終了の理由です」(東京都交通局)
東武鉄道は今年4月から通勤電車、50000系車両からWi-Fi設備の撤去を始めた。一方で、60000系や500系、100系、200型、TJライナー、THライナーには引き続きWi-Fiが設置され、「こちらは撤去の計画は現時点ではございません」と東武鉄道の担当者は言う。
Wi-Fi設置については、どのような基準が設けられているのか?
「運用コストを考慮しつつ、特急やライナー列車といったお客様が比較的長い時間滞在する車両にはWi-Fiを残しています。そもそも、Wi-Fiは訪日外国人観光客を見込んでサービスの拡充の一環として導入しました。ですから、外国人のお客様の利用が今後も見込まれる特急やライナー列車を中心にサービスを継続しております」(東武鉄道)
訪日外国人が困ったこと
今回の取材でいずれの交通事業者も触れたのが、訪日外国人観光客のことだ。ここで無料の公共Wi-Fiが整備されてきた経緯を振り返っておきたい。
2014年度、総務省と観光庁は訪日外国人旅行者を対象に「旅行中に困ったこと」「受け入れ環境へのニーズ」などについてアンケート調査を行い、1万605件の回答を得た。