かたや、アストロズに加入したバグウェルはトレード翌年の1991年にメジャーデビューし、新人王を獲得。その後も主軸打者としてチームに欠かせない存在となり、アストロズ一筋15年間で通算成績は2314安打、449本塁打、1529打点、202盗塁。1994年にはナ・リーグの打点王とシーズンMVPに選出されている。また、クレイグ・ビジオ、デレク・ベルらとともに強力打線を形成し、チームは1997年から3年連続でナ・リーグ中地区を制するなど、リーグ屈指の強豪となった。スモルツと同じくメジャー出場前にトレード要員となり移籍後にデビュー。そして、自身の成長とともにチームも強くなるというところは非常に似通っている。加えて、バグウェルも殿堂入りを成し遂げていることも同様だ。
その他に“やらかした”トレードと言えるものにはマリナーズが関わることが多い。マリナーズは1997年に移籍後に全く活躍しなかったリリーフ右腕のヒースクリフ・スローカムをレッドソックスから獲得するために、のちに最多勝とセーブ王に輝いた通算176勝の右腕デレク・ロウと、正捕手として長年活躍したジェイソン・バリテックの2人を放出するという球史に残る失敗トレードを成立させている。他にも、“やらかした”トレード例は数多くあり、最悪のトレードだと現地メディアに指摘されるものも少なくない。長年同チームでプレーしたイチローがプレーオフにほぼ無縁になってしまったのも、こういったチームの補強戦略の失敗が続いたことが大きな理由の一つだろう。
先述と違いシーズンオフのトレードとなるが、人数が多く絡んだ失敗例としてもマリナーズが挙げられる。2008年2月のトレードでマリナーズは若手5人を大量放出して、2年連続で2ケタ勝利をマークしていたオリオールズの先発左腕エリク・ベダードを獲得した。チームのローテーションの柱として期待したが、ベダードは約3年半マリナーズに在籍して15勝しか挙げられず、2011年7月にレッドソックスへトレードとなった。そして、見返りとしてマリナーズを去った選手の中には、オールスターに5度選出されるまでになったアダム・ジョーンズ(のちにNPBのオリックスでプレー)や、2013年から4年連続で11勝以上をマークしたクリス・ティルマン、移籍後に51セーブを挙げたジョージ・シェリルという“お宝”3人が含まれていたのだ。