その中で予備登録メンバーでもあった香川は、現地での紅白戦では他のどの選手よりも「キレキレ」で、レギュラーチームを「チンチンにした」というのは有名な話。結局、香川が南アフリカのピッチに立つことはなかったが、その香川のプレーが直前まで戦い方を模索していた岡田ジャパンの危機感を募らせ、ベスト16進出への手助けになったという見方もできる。香川自身にとってもサポートメンバーで味わった“悔しさ”が、その後の成長への糧になった。

 続く2014年ブラジル大会では、トレーニングパートナーという名目で、当時大分U-18所属の坂井大将と名古屋U-18所属の杉森考起という17歳の高校生2人を選考した。U-17W杯にも出場した期待の逸材に対し、当時の原博実 専務理事兼技術委員長は「東京オリンピック世代の中では非常に可能性を持っている選手」と語り、直前合宿から本大会までチームに帯同させた。しかし、両者ともにトップ昇格後に伸び悩む形で思うようなキャリアを過ごせず。サポートメンバーとしての経験を生かすことなく、期待された2020年東京五輪のメンバー争いにも絡めなかった。

 そして前回の2018年ロシア大会では、大会直前で監督が交代した中で候補メンバーとして27人を招集した後、浅野拓磨、井手口陽介、三竿健斗が落選(青山敏弘は怪我で辞退)。そして西野朗監督の要望で、当時23歳の浅野と21歳の井手口が、サポートメンバーとしてチームに帯同した(三竿は本人の意向で断念)。ともに最終予選で活躍しながらも指揮官交代の煽りを受ける形で構想から外れたが、予備登録メンバーとして負傷者が出れば直前での入れ替えの可能性もあった。非常に難しい精神状態のまま練習に参加することになった。

 こうして振り返っても、W杯の「サポートメンバー」は、その立場と役割が非常に難しいと言える。実際、選ばれた選手たち全員がその経験を4年後に生かし切れたとは言えず、「将来のために」という大義名分も、どこまで正当性があったかどうかは疑わしい。そして今回のカタール大会から登録メンバーが26人に増えたことで紅白戦の人数に困ることはなく、事実上、サポートメンバーの仕事がなくなる。選手の複雑な心情も考えると、これまでのやり方での「サポートメンバー」の選出は、不要だろう。

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