本当に危険な目にもあった。ある時、上官から「こいつ女と遊んだことないけん、おまえ、ちょっとどっか一緒に行ってやってや」と指示された。男性隊員とデートを強要されたのだ。自分の立場を守るためにも行くしかなかった。デート当日、男性隊員は日が暮れても帰ろうとせず、「夜景を見に行こう」と人気のない山奥に車で連れ出された。

「夜景を見に行ったら、何を勘違いしたのか、車の中で押し倒されました。『何してるんですか!』と、私ははっきりとNOと拒絶しましたが、もし言えない女性だったら、何かされていたかもしれません」

 その一方で、数は少ないながらもかばってくれる男性隊員もいたという。

「なかには『なんも知らん子に、そんなんやめときや』と言ってくれたり、わが子のようにかわいがってくれて、自宅に招いて奥さまの手料理を食べさせてくれたりする男性隊員もいたのは救いでした」

 五ノ井さんの事件については、こう思いをはせた。

「五ノ井さんが所属していた福島県の郡山駐屯地は震災があった場所なので、隊員の団結力が高いのだろうと思っていました。みんなで助け合って、復興を目指して生きてこられているはずなのに。そういうのも、色あせてしまっているんでしょうね……」

 ※【後編】では、船の上で「逃げ場がない」と嘆く元海上自衛隊の女性たちの告白を取り上げる。

(AERA dot.編集部 岩下明日香)