その一方で気になるのが野手陣だ。長年攻守にわたってチームを支えてきた坂本勇人が度々戦列を離脱しており、ここまでわずか49試合の出場にとどまっている。リーグ連覇の大きな原動力となった丸佳浩、今年復活の兆しを見せている中田翔も今年で33歳と完全にベテランと言える年齢に差し掛かっており、安定して長打を打てる若い選手と言えば主砲の岡本和真しか見当たらない。さらに二軍でもホームランを量産している若手選手は見当たらず、外国人選手とベテランに頼らざるを得ない状況となっているのだ。昨年から歴史的な貧打に苦しんでいる中日と主砲の鈴木誠也がメジャーに移籍した広島と比べるとまだ岡本がいるぶん救いはあるものの、このままでは確実に数年後は長打力不足に悩むことになりそうだ。
その大きな要因となっているのはやはりドラフトである。2014年の岡本以降、1位と2位の上位指名で獲得した強打者タイプの選手は1人もいないのだ。近年、ドラフト1位での抽選をことごとく外しているという事情はあるものの、入札してきた選手の顔ぶれを見てもホームランバッターと言えるのは2017年の清宮幸太郎と外れ1位で入札した村上宗隆、2020年の佐藤輝明の3人だけである。この3人のうち1人でも獲得できていたら状況は違っていたかもしれないが、もう少しスケールの大きい打者に目を向けても良いのではないだろうか。
もうひとつ大きいのはFAでの補強の失敗だ。かつては落合博満に始まり清原和博、江藤智、小笠原道大、村田修一など他球団の4番打者が多く加入していたが、ここ数年FAで獲得した野手で大きな戦力となっているのは丸だけである。本物の大物はメジャーリーグを目指すようになっており、また過去2年間を見てもFAでの移籍自体が減っていることを考えると、今後もこのような流れが続く可能性は高い。大枚をはたいて他球団の主力を獲得するというやり方は過去の手法になりつつあると考えた方が良いだろう。