2022年、首都圏では中学受験の受験者数・受験率がともに過去最高を記録した。競争が年々激化するなかで、塾選びが合格を勝ち取るスタートラインとも言え、当然、わが子を託す親の目はシビアになる。首都圏ではサピックスや四谷大塚をはじめとする大手進学塾が人気だが、その一角に割って入ろうとする新興勢力もある。ベネッセグループの「アップ」が、グループ初となる首都圏中学受験塾「進学館√+(進学館ルータス)」を東京・渋谷に開校した。仕掛けるのは、関西エリアで灘中学をはじめ難関校合格実績を急伸させた受験塾「馬渕教室」の統括だった吉田努氏。馬渕教室からアップに電撃移籍した凄腕は、首都圏の中学受験界でどのような戦略を考えているのか。吉田氏に話を聞いた。
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■関西中学受験界のカリスマ
「東京の私学はそれぞれの学校が、建学精神や教育方針を明確に打ち出し、多様な教育プログラムを展開しています。受験生も偏差値のみに捉われることなく、学校独自の魅力にひかれて志願しているように感じます。中学受験層のご両親は高学歴かつダブルインカムの方が多く、社会の仕組みをよくご存じだからこそ、教育の質を重視する考えが強いように感じます。関西よりも中学受験市場全体の裾野が広く、多様性がある。そうした首都圏の中学受験市場で、これまで私自身が実践してきた方法がどこまで通用するのか。東京で勝負したいという強い思いを抱いてきました」
中学受験塾「進学館ルータス」の統括・吉田努氏は東京進出の動機をこう話す。
吉田氏は関西の受験塾「馬渕教室」を躍進させた立役者で、最難関・灘中学校の合格者を短期間で激増させたことで知られる。かつての浜学園、希学園、日能研関西という“関西三強”に風穴を開け、馬渕を難関校合格実績では「ナンバー2」に押し上げた実績がある。
そんな吉田氏は昨年8月にベネッセグループの「アップ」に電撃移籍。アップは関西で中高受験塾を展開していたが、首都圏には進出していなかった。そこで白羽の矢が立ったのが吉田氏だった。同社の執行役員兼首都圏中学受験統括として進学館ルータスの開校準備を進めてきた。