自民党からは赤松議員のほかに、コロナ禍で開催が見送られてきた冬のコミケ(コミックマーケット)を、昨年末2年ぶりに開いた功労者として知られる藤末健三氏が立候補。立憲民主党からは栗下善行氏、要友紀子氏、国民民主党からは樽井良和氏ら6党9人が立候補していた。彼らはSNSで過去の政策の主張などから「表現の自由を守る候補者」と呼ばれており、今年8月13日から3年ぶりの開催となった夏のコミケのイベントに参加する議員・候補者もいる。
大手町(東京都)で会社事務員をしているという自称オタクの女性(37)は、「迷いましたが、今回は藤末さんに投票した」という。藤末氏は今回の選挙では7万5千票にとどまり落選したが、女性は投票した理由についてこう語る。
「インボイス制度(これまで消費税の納税を免税されていた個人事業主に税負担させる制度)が導入されることになり、アニメーターとかクリエーターの生活に大きな影響を与える懸念があるんです。この制度はもう来年には実施するというところまで議論が進んでしまっている。藤末さんは、制度の廃止ではなくて、延期を主張していたので、現実的な政策だなと思って、投票しました」
SNSには<インボイス制度が導入されたら、クリエーターが搾取され、日本の文化の担い手がいなくなってしまう>などといった声が多数投稿されている。クリエーターの問題を自分事として考えているオタクは少なくないようだ。
選挙アナリストの岡高志さんは「オタク票が注目されるようになった経緯に、山田太郎参院議員の存在がある」と指摘する。
山田氏はマンガやアニメなどの表現規制に反対してきた人物で、16年の参院選では新党改革から立候補し、29万票を獲得。野党の全国比例候補者の中ではトップの得票数だったが、新党改革が議席を取れず、落選して話題となった。
その後、山田氏は19年参院選に自民党から出馬。54万もの票を獲得し、当選を果たした。岡氏はこう語る。