本番であがってしまうアスリートなども取り入れている手法で、訓練によって実際に温感などを得てリラックスした状態になれる。このほか、膣の無意識収縮を和らげる方法には、尿もれ予防などで知られる“骨盤底筋運動”も組み合わせると良いとされる。

 挿入障害の場合、月経が順調で排卵もあれば、前編で紹介したAさんのようにシリンジ法を取り入れるのも妊活の一つの手だ。クリニックで販売しているところもあれば、通販サイトなどでも手軽に手に入る。シリンジを用いることで、タイミング法のハードルを下げることにもつながるため、性交が問題なくできるカップルでも活用する例が少なくないという。

「シリンジ法は自宅でできますし、結果は膣内射精と変わりません。私の患者さんでも、排卵のタイミングでシリンジ法を行うようになって、数回で妊娠した方もいます」(大川医師)

 女性の性機能障害は、なぜ起こるのだろうか。患者の特徴には、思春期の頃から性的な話題をタブー視し、性=悪いことといったイメージを強く持った人が多い傾向にあるという。大川医師は言う。

「そうした意味では、教育環境にも原因がある。例えば挿入障害における処女膜神話など、教育の中で性交や性反応について正確な情報を教える流れができていないことで、誤った情報が先走っている傾向もある。それが性交渉へのマイナスな向き合い方につながっているようにも感じます」

 一方、挿入障害を抱える人が婦人科を訪れた場合、子宮や卵巣、膀胱、直腸などがある骨盤内部と膣を触診する「内診」が高いハードルになることがある。診察器具も含めて性器への挿入を恐怖と感じる人も少なくない。

大川医師の性外来にも、不妊外来での内診ができず、「不妊症としての検査や治療ができない」という理由で来院する人が増えていると言う。妊婦健診の中でも、婦人科検診が終始できないという人もいる。不妊外来 で多くの患者と接する千村友香里医師(さくら・はるねクリニック銀座)は言う。

「婦人科の診察に対して、緊張する人や不安が大きい女性はたくさんいます。不安感が強い人は、事前に伝えてもらえると、患者さんによって診察方法を変える対応もできるので、怖がらずにぜひ相談してほしい」

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