大石 長崎県は離島や半島などが多いのが特徴で、交通アクセスが不便な地域が多いです。離島を中心に専門医を配置するのが非常に難しくなってきているので、ローカル5Gの遠隔医療技術を利用し、住民が島を出ることなく、できる限り地元の病院で専門的な医療が提供されるようなモデルづくりに挑戦したいと考えています。

 私自身、在宅医療に従事した経験から、誰もが取り残されず、医療をはじめ、必要なときに必要なサービスが利用できるような仕組みを作ることが重要だと感じています。

 長崎県では、今年度から、離島やへき地における受診機会の提供や在宅医療の質の向上を目指し、在宅医療現場における医療IoT機器の利活用やオンライン診療などの実証を行うことにしています。診察、診断して薬を処方し、確実な投薬を行う。そこまでが一つの診療行為だと思いますけれど、ただ遠隔診療だけではなく、薬をドローンで届けるなど、診療行為を完結できるようなモデルづくりに挑戦していきたいと考えています。

 離島や半島が多いという地理的に不利な条件や、人口減少など多くの地域課題を抱えていますが、見方を変えれば、全国屈指の課題解決のフィールドとして、多様なチャンスに恵まれていると感じています。

――長崎県知事としては当然、医療以外のことについても担っていく責務があると思いますが、医療以外で実現しようとしていることを簡潔に教えてください。

大石 長崎県に移住したい、住み続けたいと思っていただけるような「選ばれる長崎県」を実現したいと考えています。全世代の方々の安心で豊かな暮らしづくりや、若い方々などがやりたいことにチャレンジできる環境づくりに力を注ぎ、あわせて、そうした県の魅力を積極的に発信することで、県内外の多くの方々に注目していただければと考えています。

 長崎県は人口流出が多いのですが、県内で育った若い人にとどまってもらうだけではなく、Iターンも積極的に進めていきたいなと。長崎県出身じゃない方々が「長崎県はなんか面白いことしているね」とか「新しいことが生まれているね」、「挑戦しているね」と感じて、長崎県に来て挑戦していただきたいですね。

――ありがとうございました。

(聞き手・構成/杉村健)

大石賢吾氏の過去に掲載されたコラムはこちら→精神疾患は身近な病気なのに、医療が届きづらい? 「正しい情報がほしいけど」

【プロフィル】

大石賢吾

1982年長崎県南松浦郡富江町(現五島市)生まれ。カリフォルニア大学デービス生化学・分子生物学卒業、千葉大学医学部医学科卒業、同大学大学院博士課程修了。医師、医学博士。長崎大学熱帯医学研究所、千葉大学医学部附属病院等の勤務を経て、2020年から厚生労働省医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室室長補佐(新型コロナウイルス対策推進本部医療班兼務)、21年から国立研究開発法人日本医療研究開発機構革新基盤創成事業部事業推進課課長。22年3月から長崎県知事。

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