今年2月の長崎県知事選で初当選を果たした新人の大石賢吾知事(40)。現職では全国最年少の知事になった。大石氏は精神科医で、2020年3月まで千葉大学医学部病院に勤務。19年3月からの1年間は、朝日新聞出版のニュースサイト「AERA dot.」のコラムニストとして連載「医療が届かずに悩んでいる方へ 一精神科医の切なる想い」を執筆・配信していた。精神科医からなぜ長崎県知事になる道を選んだのか? 「AERA dot.」連載時の編集担当者が大石知事にインタビューを試みた。
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――2019年3月から20年2月にかけて、私どもの「AERA dot.」で認知症や発達障害に関する一般の方々の相談に精神科医として回答するコラムを書いていただいていました。20年4月に厚生労働省勤務となった際に連載を休止して、それ以来のお話をさせていただく機会になります。最初の質問は私からすると確認となりますがあらためて、精神科医として働いていらっしゃったとき、どういった思いから「AERA dot.」での連載を書くことに至ったのでしょうか。そのとき考えていた「実現したかった医療」は何でしょうか。
大石 当時を振り返って私も懐かしく思っています。病院の精神科の外来で医師として患者さんに接していたわけですが、その中には、重症化していて命の危険が迫っているような状況になるまで医療機関にかかれない、つながれない人がいました。そういった人たちをどうにかしたいなという気持ちがあって、自分が医師として病院に来た患者さんに対応しているだけではそれはできないと感じました。
やはり社会の中にそういった方々がいらっしゃるので、メディアの力をお借りすれば、そういった方々にも声が届くと思ったんです。精神科に受診するということを非常に悩まれる方もいらっしゃるんですね。でも、そうではなくて、心配なことがあれば精神科にかかって、相談していいんだよということをお伝えしたかったんです。