「実現したかった医療」と言うと大げさかもしれませんけど、町の中で困っていらっしゃる方々が、しっかりと必要な医療にかかれる、つながれる、というようなこういった仕組みづくりが必要なのだろうと思って、その一助としてではありますけど、執筆をさせていただいたということだったと思います。
――ご自身は「AERA dot.」での発信自体にどのような手応えを感じていらっしゃいましたか。
大石 発信自体はよかったと思います。とても反響があった回もありました。それはやはり困っている方々、もしかしたら今後困るかもしれない方々、あとはご家族やご自身が同じような状況になる可能性がある方々の目に触れて、考えるきっかけになったのかなと思っています。
――大石先生は通常の外来以外にも、そういった情報発信の必要性を感じて行動を起こしたわけですが、普通の精神科医の方々にとってはそういうことは難しいものですか。
大石 そう思いますね。精神科というのは、「正解」を言いにくい診療科なんですね。治療法のガイドラインなどはありますけれど、その先生の評価によるものがけっこう大きく、それは主観的な表現であって、非常に数値化するのは難しいです。客観的なデータで示すのが非常に難しい診療科の一つだと思いますから、相談への回答として「こうやるべきだ」みたいなことを書きづらい背景があります。
――次に、千葉大学医学部病院から厚生労働省医政局に移られるわけですが、厚労省に移ってから新たに気付いた社会課題があったのでしょうか。
大石 厚労省では精神医療に関わっていたわけではなく、コロナ対策や救急医療に携わっていました。そこでは、個別・具体的なものというよりは仕組みの問題、広く全国の医療政策を考える観点になりました。精神科医として地域にいたら「こんな支援があったらいいのにな」と思っていたところですけれど、それをやるにしては、国としてはやりにくいところもあると。