仕組みとして国がカバーすべきもの、また地方に任せるもの、そういうところを意識しながら政策を組み立てて行かなくてはいけない。これは地域にいたときには見えなかったことですね。
――そこから政治の世界へ、長崎県知事になろうと決意した理由はどこにあったのでしょう。
大石 それは少し話は戻るのですが、医師として訪問診療をやっていたときに「医療だけでは治せない」と感じた経験が根幹にあります。「老老介護」で、寝たきりのおじいちゃんのお世話をしているおばあちゃんの具合が悪くなり、私が治療しに行ったんですけれど、おばあちゃんが倒れてしまったら両方命が危ないという状況でした。これは医療だけでは治せず、行政が公助でしっかりサポートをしていかなくてはいけないんだろうと思ったんです。
しかし、公助のありかたを変えるためには、政治の力が必要です。でも、すぐに政治家になれるわけではなく、その時の自分に何ができるのかを考えました、そこで、もしかしたら、医療福祉政策をしっかりやれば国民の皆さんのために役に立てるかなと考えて、厚生労働省に入省しました。一方で政治の勉強も継続し、政治に関わる機会を求めていたというところです。公助の制度を変える、法律を変えるには立法府にいかなければいけないと思い、最初は国会議員を考えていたのですが、そんな中で知事選挙への挑戦の話をいただいて、それはもう悩みました。
国政が県政になると、「国民が」の部分が「県民が」になり大きく異なりますが、もしかすると責任をしっかりと持って実行すれば、県民の皆さんが安心して安全で継続して生活できる社会を作れるんじゃないかなと。むしろ、県でよりよい社会を作ることができれば、国にもそういった影響が広がるんじゃないかなということを考えて決断しました。
――そして、長崎県知事選で大接戦の末、当選されるわけですが、知事として実現しようとしている医療はどんなものでしょうか。