――その姿勢が昆虫の新種発見にも繋がったのですね。
大学生のときに、ニュージーランドと台湾で「ホソカタムシ」の新種を見つけました。新種というのは、捕まえるよりも証明するほうが大変です。ものすごい数の昆虫標本を収蔵している大英自然史博物館に出向いて、標本と同じ種でないかを見比べるんです。ホソカタムシは長さ数ミリほどの小さい虫なので、顕微鏡を覗き解剖をしながら進めます。生殖器官の形が違うことがわかり、海外の学術誌に論文を発表して、認められました。
――これほどまでに牧田さんを虜にする昆虫の魅力とは、ズバリ何でしょうか。
まだ謎だらけということです。実は世界の昆虫は、その90%以上が未知といわれているので、自分で捕まえて明らかにすることができるんです。そして、昆虫には「絶対」がありません。あの木に行けば必ずいるという決まりがないので、採集や研究は無限です。
――牧田さんの昆虫との歩みは、これからどうなっていくのでしょうか。
僕が芸能事務所に入ったきっかけは、魚類学者でタレントでもある「さかなクン」さんなんです。さかなクンさんが海の生き物の魅力を伝えているように、昆虫の魅力をもっと多くの人に広めたいという憧れがあります。そして何といっても、昆虫と楽しく生きていたい。そう、アフリカ大陸で虫捕りをやってみたいんです。砂漠や熱帯雨林、山脈とさまざまな自然環境があるので、昆虫も多種多様のはずです。ハンターとして明らかにしてみたいですね。
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■牧田さんに聞く「夏の虫捕りを楽しむためのアドバイス」
昼間、公園などセミの抜け殻を見つけた場所に、是非、夜行ってみてください。セミの羽化シーンに出合えるかもしれません。羽化したての真っ白なセミは、とてもきれいです。
また、夏の旅行でサービスエリアに行く場合は、明かりのある場所を見てみてください。カブトムシやクワガタが集まっていることがあります。僕の場合、旅行道中の全てのサービスエリアやコンビニの明かりをチェックするので、なかなか目的地につきませんね。夕方にクヌギやコナラの木があるところに行って、地面の近くをよく見ると、カブトムシやクワガタが羽を広げて飛んでいることも。
〇牧田習 1996年生まれ。昆虫ハンター。北海道大学理学部卒業。2020年東京大学大学院農学生命科学研究科入学、現在博士課程在学中。オスカープロモーション所属。昆虫をテーマにしたオンラインイベントで活動するほか、テレビ神奈川「猫のひたいほどワイド 」水曜レギュラー、NHK高校講座 歴史総合にレギュラー出演。
(聞き手・構成 AERA dot.編集部 市川綾子)