20代の頃、職場の先輩から、こんなお叱りをもらったことがありました。
「秀島の話はとにかくまどろっこしい! ライブレポートでも新作紹介の話でも、最後の最後まで結論を引っ張りすぎ! まずは、よかったのか、そうでなかったのか、最初に言わないと。聞いている人はもどかしい気持ちになるよ!」と。はい。本当におっしゃる通りです……。身を縮こまらせて聞いていました。
その先輩は局内でも「ハッキリものを言う厳しい仕事人」というイメージで通っていましたし、その指摘もズバリ的を射たもので、こちらはただただ神妙な面持ちで聞くばかり。「本当に怖いなあ」と思いながら体もカチコチになっていました。
でも、最後の一言で、そのアドバイスがストーンと心に入ってきたのです。
「ま、けどね、私だって最初からできてたかっていったら、そうでもないし(笑)。まだこれからなんだから、意識していけば大丈夫よ!」
痛いところを突かれっぱなしだった厳しいアドバイスのあと、このフォローの一言のあたたかさ。それまでの緊張が一気に緩み、「ダメダメな後輩になんてやさしい配慮……」と、涙が出そうになりました。
■ピンと張ったあとは、ほどいて緩める
その後、私も年齢を重ね、自分が後輩を指導する立場になって、「叱るほうだってしんどいのだな」と、実感するようになりました。相手にも自分にも決して楽しい話ではありませんし、自分も通ってきたからこそ「きっとつらいだろうなぁ」と先回りして感情移入してしまったり。そんなときこそ、言うべきことだけ言って「はい、終わり」よりも、最後に、張り詰めた緊張をふっとほどく一言を加えてみてください。
<私も落ちこぼれの暗黒時代があったのよ>
<いつでも相談に乗るから、無理しないで遠慮なく声をかけてね>
<どうしようもないときは、話を聞くから、ランチでも飲みにでも行こう!>
真剣に注意したあと、その姿勢を急に崩すのは照れ臭いと感じるかもしれません。しかし、そのちょっとした一言があるからこそ相手の気持ちも救われますし、素直に受け入れられます。「はい、ここまでね!」と気持ちよく区切りがつけられ、しこりも残りません。
立場やキャリアは違えど、基本は、相手への思いやりと敬意。言うべきことを言ったら、最後にちゃんと緩める。さあ、一緒に笑い飛ばして次へと進みましょう。
【ここまで聴いてくれたあなたへ】
叱りっぱなし、怒りっぱなしになっていませんか?
(構成/小川由希子)