1980年代から旧統一教会を取材し、全国霊感商法対策弁護士連絡会の代表世話人である山口広弁護士との共著もあるジャーナリストのいのうえせつこさんは、こう語る。

「本当に素直ないい子たちが一生懸命に選挙のビラ配りとかをしてくれるわけですよ。しかもタダで。それは選挙をする側にとってはとてもありがたいことなんです」

 今回、安倍氏銃撃事件が起こるまで、選挙や災害現場でひたむきに働く旧統一教会のボランティアの申し出が断られることはまずなかっただろう。

 では、何が問題なのか。

 山口弁護士は、こう指摘する。

「旧統一教会はボランティア活動を通じて、地域や関係機関への信頼を醸成し、浸透します。そのうえで、いずれ信者や献金獲得をねらう試みを展開するのです。その資金は霊感商法の手口で集めたり、信者に出させたりした金です」

ボランティア本当の役割

 では、どうやって具体的に献金や信者を獲得したのか。そのカギとなるのは「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)である。

 前出のいのうえさんがかつて取材した脱会者の話によると、旧統一教会に入信すると、「ほうれんそう」を徹底的に刷り込まれるという。

「まず、ボランティアは、金になりそうな人の情報を教会に『ほうれんそう』させる。それを受けて、今度は『壮婦(そうふ)』と呼ばれる主婦信者が『いつもお世話になっています。何かお困りになっていることはないですか?』と言って、訪ねるわけです。そうやって目星をつけた家に入り込み、財産をすべて奪い取る。そして吸い上げる。そういうシステムができ上がっているんです」(いのうえさん)

 つまり、ボランティアの役割には「浸透」「情報収集」も含まれており、かつ、教会への徹底した「ほうれんそう」だと言う。それらを基に教会側が特定の人に目を付けて、布教活動を行う流れになっている。この構図は、選挙ボランティアに限らず、災害時でも非常に似かよっている。

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