東日本大震災の際に各地の被災地を訪れ、旧オウム真理教や旧統一教会など、カルト教団の動きに目を光らせていた宮城学院女子大学名誉教授(宗教学)の新免貢さんは、こう語る。

「被災して困っている人って、やさしくされると、ついつい心を開くじゃないですか。そこに実にうまく、すっと入る。それが彼らのやり方です」

原発事故の補償金を献金

 ある日、新免さんは仙台市の仮設住宅のコミュニティーセンターのホワイトボードに旧統一教会関連団体の名前を見つけた。

「ボランティアで信者が来て合唱奉仕を行う、ということでした。私は自治会長にその団体が霊感商法で知られる旧統一教会であることを伝えて、強く警告いたしました。ただ、時すでに遅しで、仮設住宅の全戸に案内のビラが配られたあとでした」

 ビラに書かれているのは、直接布教活動につながるわけではない合唱コンサートの案内にすぎない。つまり、ボランティアがここでも“入り口”としての役割をはたしているのだ。

 日本基督教団 白河教会の竹迫之牧師は福島県沿岸で被災し、旧統一教会の被害にあった家族から相談を受けてきた。

「津波で亡くなった夫の霊が霊界で苦しんでいるという話を旧統一教会に信じ込まされ、夫の霊を救済するために高額な献金を繰り返すようになった。それに対して家族が『教団に騙されている』と言っても聞く耳を持たない。どうしたらいいか、という相談がありました。同様な被害相談を何件も受けています」(竹迫さん)

 竹迫さんは「旧統一教会のボランティア活動を総合的に見る必要がある」と強調する。

「被災地での活動自体は善意のボランティアなのかもしれません。携わっている一人ひとりも善意で動いているのかもしれません。しかし、それは被災地の人々を信用させて、騙していくための布石なわけですよ」(同)

 山口弁護士によると、東日本大震災にともなう福島第一原発事故では、その補償金を献金させられた被害例もあるという。

災害支援関係者や団体は、少なくともボランティア活動で知り合った方々を宗教団体として勧誘等を一切行わないという念書を出させるべきと思います」(山口弁護士)

 善意のボランティアを前面に掲げて被災地に忍び寄る旧統一教会。それは選挙支援の場合とよく似ていて、その手口が巧妙にシステム化されていることをうかがわせる。そのことを災害支援関係者にも知ってほしい。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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