「加えて、今年度からは実技のバイオリンも教えることになりまして。まったくの初心者にバイオリンを教えるという試みです。1学期に5回ほどキャンパスに行っての対面指導とリモート授業との組み合わせ。バイオリンに触れたことのない学生に、しかも半分オンラインで教える難しさはありますが、これも新たな挑戦。初学期の学生たちはファイナルコンサートで素晴らしい成果を発揮してくれました。リベラルアーツには不可欠な「音楽」をカリキュラムに取り入れているAIUの姿勢は素敵ですよね。
授業の準備や成績をつけるのは大変ですが、学生はみんな意欲的ですし、課題を出せば面白いアイディアを書いてくれるので、それを読むのも楽しみのひとつですね。私はハーバードに在籍していた頃から、ハーバードの学生と世界中の小中高生を大分県に集めて行うサマースクール『Summer in JAPAN』を開催しており、今年で10年目を迎えました。そうした経験もあって、教えることや人が成長していく姿を見るのはとても好きなので、大学の授業も楽しませていただいています」
■同世代の人たちに伝えたいこと
テレビの情報番組のコメンテーターとしても活躍する廣津留さん。この仕事にはある思いが込められている。
「私が住んでいたアメリカと比べると、日本では若い女性が自分の意見を話す機会や頻度が少ないように感じています。たとえば仕事のミーティングでは、年齢が上の人が中心となって説明したり、若い人が遠慮して譲ったりする場面が多くあります。そうした状況に、帰国直後はとくにギャップを感じました。ニューヨークで仕事をしていた頃は年齢や性別、肩書きに関係なく意見したり、プロジェクトをリードしたりすることは当たり前にありましたし、そもそも意見を言うべき場面で何も発言せずにいると、『参加している意味がない』と思われることが多かったです。自分の属するカテゴリに関係なく、ひとりの人間として自由闊達な議論ができる社会が私の理想。私がコメンテーターとしてテレビで発言することで、微力ながら『若い女性が意見を言うことって普通だよね?それがどうかしたの?』と話題にすらならなくなるようになれば嬉しいですね」
(構成/奥田高大)