うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中でとり入れている心理テクニックや教育方法をお届けします。今回は「『いじめ』という言葉のあいまいさ」についてです。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』も絶賛発売中です。ぜひご覧ください。
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私が中学受験をしたときに個人面接があり、先生からこんな質問をされたことを、たまに思い出します。
「あなたはいじめに対してどう思いますか?」
この質問はあまりにも漠然としすぎていて、私は、いじめの何について答えればいいのか分からず、深く考えこんでしまいました。もちろん、いじめは決してすべきことではありませんし、なくすべきものです。とはいえ、なくすための対処方法は一つひとつ異なるでしょうし、簡単にひとことで述べろと言われても、無理でしょう。
さんざん悩んだ末に私は、「分かりません」と答えました。その質問をした先生から、「あなたはいじめに対して何も考えていないのですか」と言われたのを、今でも覚えています。入試の面接なわけですから、何でもいいから、答えるべきだったのでしょう。
■いじめを教師に相談しても、解決しないことが多々ある
帰り道、同じ学校だった友人に聞くと、「いじめが存在することを、先生に言いますって答えたよ」と言っていました。しかし、先生に言ったからといって、解決していないいじめがたくさんあり、悪化する例さえも存在するのです。ですから、やはり私はそれが答えとしてふさわしいのかは「分からない」と思いました。
そんなことがありつつ、無事その中学校には合格できたのですが……入学早々中学1年生のときに、別のクラスで1人の子を仲間外れにしたり、所有物を隠したりする「いじめ」がおきていたそうです。後から聞いた話ですが、その生徒は担任(なんと偶然にも、面接で私にいじめについて聞いてきた先生でした)に、自分が今置かれている状況について相談をしたとのこと。すると担任は、「あなたは生き方が下手くそですね」と答えただけで、何の対応もしてくれなかったのだとか。
この話を聞いた時、私はその先生に対して、「あなた、いじめに対してどう思っているのですか」と問い詰めたいような気持ちに駆られました。 その先生はかなり前に退職していますが……私の記憶には、今でもしっかり残っています。