道路の真ん中で車がひっくり返され、火が放たれた。戦車が出動した。
「戦車が走っていって、バリケードを破り、その後ろに車が50台くらいバーっと続いた。映画みたいだなあ、って思った」
道は開いたものの、バスは止まったままだった。仕方ないので、「この日の飛行機に乗りたいので、なんとかお願いします」と、首都に向かう車をヒッチハイクした。
「ところが、首都のほうがもっと燃えていたんですよ。大きなモールも襲撃された。ホテルも危ない、ということでガソリンスタンドに泊まった」
燃料が貯蔵されたガソリンスタンドは「重要拠点」として比較的警備が厳重だった。
「銃を持った人がいるから、安全に泊まれる」と言われて、車中で寝た。
■もう取材をやめて帰ろうか
ケニアの隣国、ウガンダでは「ホテルの部屋に強盗が入って、カメラを根こそぎ持っていかれました」。
首都カンパラから「赤道の村」を訪ね、ホテルに戻ってきたときだった。
「部屋に置いていたカメラボディー(キヤノンEOS-1DX)、交換レンズ数本、パソコン、10万円相当のドル紙幣がなくなっていた……とても切なかったです」
被害額は?
「軽く3桁万円です。しかも、そのときだけ旅行保険に入っていなかったんです。仕事でバタバタしていたので。搭乗口で気がついたんですが、『今まで大丈夫だったから、まあいいや』と思って、保険なしで行っちゃった」
クレジットカードだけは助かったものの、パソコンがないので撮影した写真をそこに保存できない。まだ日程は2週間以上残っていた。
「もう取材をやめて帰ろうか、と思いました。葛藤の末、最終的にウガンダの旅を続ける決断をした。でも、心が病んでしまった」
ホテルの防犯カメラには小澤さんの部屋から出てくる容疑者の顔がはっきりと写っていた。
「こいつだ、ってわかるから、すごいムカつくわけですよ。『もう、ちくしょう、ウガンダ死ね』と思った」
小澤さんは列車でビクトリア湖に向かった。そのとき写した写真には車窓からの光がぼんやりと女性の顔を照らしている。
「もう傷心でしたね。湖に行ってのんびりすれば少し癒やされるかなって。そこで旅を復活させられるか、考えようと思ったんです」