■留置場で人生を考えた
次に訪れたのは野生動物観光で有名なケニアだった。
「アフリカのなかではふつうの国ですね」と、筆者が何げなく口にすると、思いもよらない言葉が返ってきた。
「ぼくはここで留置場に入れられたんです。(国際テロ組織)アルカイダ容疑です」。もう小澤さんの目は笑っていなかった。
赤道に近いナニュキの村で何げなく犬を撮っていると、突然、背後から首をつかまれ、軍に拘束された。
「たった4日間の留置でしたけれど、いつ出られるかわからない4日間は地獄でした。2日目に裁判所とかに連れていかれて、『お前、なんでここにいるのか、わかっているか?』みたいなことを英語でペラペラ言われた。3日目が終わったとき、もう一生出られないかもしれないと思いました」
なぜ、小澤さんはテロリスト容疑がかけられたのか?
「ケニアに来るふつうの外国人は四輪駆動車に乗って、ガイドがついて、国立公園に動物を撮りに行く。だから、観光地でもない村でずっと写真を撮っている外国人は怪しい。留置場で出会った人はそう言っていました」
筆者は反政府勢力と認識され、軍や警察から暴行を受けた写真家を何人も知っている。
「留置場から出られてよかったですね」と、心底から言うと、「本当ですよ。4日間、結構人生を考えました。それがあって、ぼくは結婚したかもしれない。ちゃんとしないといけないな、と思った」。小澤さんはしんみりと語った。
■暴動で戦車が出動
今回の取材では「アフリカで結構やられた」と言う。ガボンでは暴動に巻き込まれた。
赤道直下の東アフリカで金環日食が見られることを知った小澤さんは「時間があまりないなか、取材を強行した」。それがガボンだった。5~6日の滞在で日本に帰る予定だった。
ところが、「日食を見た日に、家が燃えていたんですよ。選挙で『不正があった』とかで、突然暴動が起こった。どこかの部族が『この先には行かせねえ』みたいな感じで、首都への道路を封鎖した。それで、帰れなくなってしまった」。