ケニア(撮影:小澤太一)
ケニア(撮影:小澤太一)
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 突然ですが、問題です! 赤道が陸上を通過している国は全部でいくつあるでしょう?

【小澤太一さんの作品はこちら】

 答えは11カ国。インドネシア、ウガンダ、エクアドル、ガボン、ケニア、コロンビア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、サントメ・プリンシペ、ソマリア、ブラジル。

 それを知った写真家・小澤太一さんは「意外と少ないな。全部まわって撮れるかも」と思った。2015年3月、サントメ・プリンシペを訪れたときだった。

「もう、そこからわけがわからないですよね、サントメ・プリンシペって何? って感じ」と、小澤さんは笑った。世界地図を広げ、指さしたのはアフリカの西にある大西洋上の点だった。

「サントメ島とプリンシペ島っていう小さな島があって、2つ合わせて東京都の半分くらいの面積の国なんです」

サントメプリンシペ(撮影:小澤太一)
サントメプリンシペ(撮影:小澤太一)

■赤道はいけるんじゃない?

 7年前、小澤さんは親しい旅行会社の担当者に「なんか面白い国、ないですかね? アフリカで」と尋ねた。およそ誰も行ったことがなく、現地の情報もほとんどない国に足を踏み入れてみたかった。すると、サントメ・プリンシペの名前が挙がった。元バックパッカーの担当者は現地を訪れたことがあった。写真を見せてもらうと「直感的に面白そうだなと思った」。その約1カ月後、旅立った。

 予想どおり、サントメ・プリンシペはいい島国だった。

「島の人の生活はぜんぜん裕福そうではないんですが、気持ちに余裕が感じられた。外国人から金をせびろうとか、盗んでやろうとか、そんな感じがぜんぜんない。撮影を受け入れてもらえそうな感じがしました」

 取材中、サントメ島の南に位置する小島に渡った。「そしたら、これがあったんですよ」。見せてくれた写真には高さ2.5メートルほど石碑が写っている。赤道を示すモニュメントという。その下にはタイルで作られた大きな世界地図が広がっている。

「これを見た瞬間、『うわー、赤道だ』って、北半球と南半球をまたいで写真を撮ったりした。そして、ふと作品のテーマとして『赤道はいけるんじゃない?』と思った」

 3年半にわたる赤道の国々を訪ねる取材が始まった。

「ただ、かけ足で訪れるのはよくないと思った。必ず、1回の旅は1国にして、丁寧に撮ろうと決めました」

 そして、小澤さんは「サントメ・プリンシペは比較的治安がいい、接しやすいアフリカの国だった」と口にした。筆者はその言葉を軽く受け止めた。後で気がついたのだが、それは意味深な言葉だった。

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留置場で人生を考えた