●~野球以外の分野での挑戦も頭にある。

阪神の晩年、昨年と野球が中途半端に終わった。中途半端のままで未練があったら、他の道に進んでも全力を注げないはずです。仮に自分がメジャーとか、世間で言う超一流までやっていたら違ったと思います。でも僕は野球で成功した人間ではない。野球を終わらせてから次のことをやりたいので四国へ来たわけです。愛媛での今はそれに没頭しています」

「昔は野球以外のことは考えていなかった。野球で成功して現役引退後も野球界に何か携わりたいと思っていました。でも今は考え方が変化して、今後も野球に関わるかどうかはわかりません。他の分野での勝負もあり得ます。人生1回きりですから色々学びたいし経験したい。楽しいこともやりたい。環境、状況、家族など踏まえて決めたいと思います」

「もしかして上(=NPB)からポンっと声がかかったら状況も変わるかもしれない。でも現実を見ないといけないですから」

 現状を冷静に受け止め客観的に理解する。その上で今後に関しての方向性を模索している。伊藤隼太は決して浮ついてなどいない「リアリスト(現実主義者)」である。今後の野球人生がどうなるかはわからないが、どんな道に進んでも何かを成し遂げてくれるように思えた。(文・山岡則夫)


●伊藤隼太
1989年5月8日、愛知県出身。 右投左打。中京大中京高から慶応大を経て2011年ドラフト1位で阪神入団。2021年から愛媛マンダリンパイレーツでコーチ兼任としてプレー。NPB通算365試合出場、154安打10本塁打59打点、打率.240。