■まずは食生活の見直しから始めよう

普段どんなものを食べていますか? ※写真はイメージです (c)GettyImages
普段どんなものを食べていますか? ※写真はイメージです (c)GettyImages

 中高生の便秘には、前述のように子どものころからの便秘体質が続いているものと、生活習慣が引き金となって起こる大人型の便秘の二つがあります。大人型の便秘は食生活の改善を中心とした生活療法でよくなることが多いそうです。なお、年齢が上がるにつれて、後者の大人型が多くなります。

 つぎに、便秘の改善法、治療法についてです。食生活で大事なのは「食物繊維」です。「食物繊維=生野菜」というのは間違いで、実は生野菜からは食物繊維があまり取れません。食物繊維はキノコ類や豆類、ニンジンやダイコンなどの根菜類に多く含まれているので、これらをゆでたり炒めたりして食べるのが効果的です。料理を作ってくれるご家族に相談してはどうでしょう。食事だけでは難しい場合、食物繊維の多く入っている飲料やサプリメントなどで補うのも一つの方法です。

■市販薬を飲むときは「副作用」に注意して

 便秘になったときの対処法として、薬局などで買える市販の下剤を使っている人も多いのではないでしょうか。軽い便秘なら市販薬でも大丈夫ですが、薬の選び方には注意が必要です。

 便秘薬には大きく二つのタイプがあります。そのうち、生薬のセンナなどが含まれる「大腸刺激性下剤(大腸を強く刺激して排便を促すタイプの下剤)」はおすすめできません。副作用が強いので、週に何度も長期間飲んでいると、だんだん薬の効きが悪くなって、飲む量や回数が増えていく、いわゆる「下剤依存症」の副作用が起こります。インターネットなどで「便秘にいい」と紹介されているお茶やサプリメントのなかには、激しい下痢などを引き起こすことから消費者庁が過剰摂取に対して注意喚起を促しているものがあります。

■中野医師のおすすめは「浸透圧性下剤」

 中野医師が推奨するのは「浸透圧性下剤」というタイプの下剤です。これは浸透圧によって腸内の便を増やし、やわらかくしてお通じを促す薬で、酸化マグネシウムなどを主成分とするものがポピュラー。価格も手ごろです。

「便秘の治療は、たくさんたまった便を強い下剤で出すのではなく、こうした浸透圧性下剤を少量、毎日服用して排便のリズムをつけていくのが王道です。この薬に使われているマグネシウムは、豆腐を固めるときに使う“にがり”と同じもので、からだに安全な成分です」

■市販薬でよくならないときは病院へ

 浸透圧性下剤を飲んでも便秘が治らない場合、逆に下痢になってしまう場合は、医療機関にかかりましょう。

「便秘はれっきとした病気です。医療機関に行けばドラッグストアでは買えない、効果的な治療薬を、その人の症状に合わせて処方してもらえます。薬が合えば便秘は割合すぐに解消されていくので、悩まずに早く受診をするのがおすすめです」

 病院にかかるときは、まずは近くのクリニックに行きましょう。普段、風邪を引いたときに行っている病院で問題ありません。中学生までは、子どものころからかかっていた小児科で対応できることが多いです。高校生は一般内科で診てもらえます。

■自分のからだのことを知っておこう

 中野医師は「自分の排便の傾向を知っておくことが大切」だと話します。

「緊張すると便秘になる人もいれば下痢になる人もいます。排便はからだの状況を反映しやすいのです。自分の排便傾向がわかると、生活習慣でどのようなことに注意をすればいいのかがわかります」

 そうすることで、進学してからも、大人になってからも、上手に自分のからだとつきあえて、気持ちよく毎日が送れるようになるでしょう。まずは便秘の改善を始めてみませんか。

中野美和子医師。小児の排便障害の治療に長年従事。さいたま市立病院小児外科非常勤・元部長。著書に『赤ちゃんからはじまる便秘問題』(言叢社)
中野美和子医師。小児の排便障害の治療に長年従事。さいたま市立病院小児外科非常勤・元部長。著書に『赤ちゃんからはじまる便秘問題』(言叢社)

文・取材/狩生聖子

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