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歯科では抜歯をはじめとする外科的治療が頻繁にあります。睡眠不足、あるいは体調がいまいちというときに、こうした治療を受けても大丈夫なのか? 受ける場合の注意点にはどのようなものがあるのか? 歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞きました。

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 抜歯は歯科ではポピュラーな処置の一つです。進行したむし歯や歯周病があり、そのままにしておくとデメリットが大きい場合や、むし歯のリスクの高い親知らずがある場合、矯正治療で歯を移動させるために抜いたほうがいい場合、などです。

 このほか歯科でおこなう外科的治療として、進行した歯周病による歯周外科治療(歯ぐきを切開してプラークを取り除く処置をおこなう)、失った歯ぐきを増やすための移植手術(上顎歯肉の一部を切除し、移植する)、インプラント手術などがあります。

 こうした処置を睡眠不足や体調不良のときに受けることはすすめられません。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 まず、睡眠不足や体調不良の場合、免疫力も低下していると考えられます。免疫力が低下していると、傷の治りが悪いなど、歯ぐきの縫合部分の回復が遅れてしまいがちです。実際にこうしたケースは多く、傷口に口の中の細菌が集まり、そこから病原菌が繁殖して、炎症を起こしてしまうこともあるのです。

 もう一つは、治療の際に痛みが強く出やすいことです。

 外科的治療では前処置として、はじめに口腔粘膜に麻酔注射をすることが多いのですが、通常、注射針で痛みを訴える人はほとんどいないのに対して、睡眠不足の人は「痛い!」と敏感に反応することを私自身、何度か経験しています。

 これは睡眠不足のために自律神経が乱れ、交感神経が緊張状態になっているためだと思われます。麻酔薬に含まれるアドレナリンには心拍数を上げる作用があるため、交感神経が緊張している人に注射をすると、動悸が激しくなり、気分が悪くなってしまうことがあるかもしれません。

 もちろん、これらの問題から命にかかわるような大ごとになることは基本的にありません。ですから、若くて持病などがなく、「睡眠不足ですが、大丈夫。ぜひ、抜歯してほしい」などと言われれば、治療はしますが、それでもやはり体調のいいときに受けるにこしたことはないと思うのです。

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