飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ人気連載「猫をたずねて三千里」。毎回、心に響くストーリーをお届けしています。今回は、東京都在住の事務職、小松さん(48)のお話。15年前、保護したキジ猫「トラ」の飼育を両親に託し、トラは愛情を一心に受けて育ちます。しかし両親が80代になると相次いで倒れてしまい……。高齢で猫を飼うことについて、小松さんの思いを聞かせてもらいました。
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僕とトラとのつき合いは古いんです。そもそもの出会いは15年前にさかのぼります。
実家のそばの公園前でたまたま僕が見つけたのですが、生後2カ月くらいで小さかった。可愛かったし、道路を渡りそうで危ないし、放っておけなかったんです。
それでひとまず友人に連絡してトラを預け、両親に「猫を飼わない?」と相談しました。
両親は動物好きだったけど、自分たちの年齢などを考えたのか、「うーん」「どうかな」と足踏み。僕はトラを引き取りたいと思っていたので、あまり深く考えずに言ったんです。
「大丈夫、この先何かあっても、僕が責任を持つから」
それならば、と父と母が首を縦に振り、トラとの生活がスタートしました。
■じいちゃん子になったトラ
暮らし始めると、両親は困惑していたのがウソのように、トラに夢中になりました。
うちの両親は自営業で、実家と工場が一緒になっていました。僕はサラリーマンをしていて、朝が早く帰宅が遅いこともあったので、食事やトイレのお世話はもっぱら両親がして、僕は病院に連れていったり、フードや砂の買い出しなどを手伝ったりしました。
トラは、“じいちゃん、ばあちゃんに甘える孫”みたいに両親になつきました。とくに父と気が合うようで、添い寝したり、ブラシをしてもらったり、父がお風呂に入ると後を追い、湯船のふたに座って見守っていたんですよ。
トラを実家に迎えてから5年後。父が少し体調を崩したことから工場を閉め、実家を売ることになりました。