僕が実家に行った時、父は片足をついて座ったまま動けず、トラが周りをウロウロ。母の入った病院に救急搬送し、そのまま入院しました。

 倒れた直後は話せたし、退院の望みがあったので、トラはそのまま実家のアパートに置いて、妻と交代で毎日、朝夕2回、世話に通いました。でもまもなく、両親ともに入院が長引きそうだとわかり、3月末、トラは僕のマンションに引っ越してきました。

 トラは僕らの顔はよく知っているけど、環境が変わるので、2段ケージの中でしばらく過ごしてもらいました。ケージに入るのが初めてなので、しばらくニャアニャア鳴きました。

 モンジのほうは、元々一匹狼タイプで、トラをあまり気にしていないようだったけど、ゆっくり仲良くなればいいなと思いました。1カ月もすると、少しずつ距離が近づきました。そんな矢先の5月半ばに母が亡くなったのです。

距離が近くなったトラ(左)
とモンジ
距離が近くなったトラ(左) とモンジ

 一方、父は、意識不明のままがんばっていました。

 コロナ禍で僕らも面会がなかなかできないなか、3カ月後に転院することになったのですが、「トラがじいちゃんと会うチャンスだ!」と思いました。そして、次の病院に移る時に、トラを(家から)連れてきてもらったのです。

 もちろん父の意識ははっきりしないし、トラもキャリーケージに入ったまま。

 トラだって「ここどこ?」と思ったかもしれないし、僕の自己満足だと思います。でもどうしてもそうしたかった。トラを、大好きなじいちゃんにもう一度会わせたくて……。

転院する時に父と再会。「トラ、じいちゃんだよ」
転院する時に父と再会。「トラ、じいちゃんだよ」

 それが、父とトラが会う最後の時間になりました。

 父は結局、意識が戻らないまま、今年8月16日に息を引き取りました。入院は1年5カ月に及びました。入院途中でガンが見つかり、さらに院内感染でコロナにもかかって。

 実は父が亡くなる前日、お盆で母の墓参りにいき、僕はこう話しかけていたのです。

「じいちゃんのこと、そろそろ連れていってあげてよ。意識がないままずっと寝たきりで可哀想だし、楽になるといいね。トラは自分が見ているので心配いらないよ」と。

だから、母が「じゃあトラをお願いするわ」と、父を連れていったのかもしれません。

今日はここで一人寝?
今日はここで一人寝?
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部屋に祭壇を作り、父の写真を飾った時にトラが