その井上さんが「大人向けの酒場で飲むなら」と名前を挙げたのが、川端通にともる赤提灯が目印の「赤垣屋」。縄のれんをくぐって格子戸を開けると、使い込まれた飴色の空間が鰻の寝床式に奥まで続いている。昭和20年代から70年以上も地元客に愛されてきた、京都が誇る名酒場だ。

赤垣屋/仏産の高級な鴨肉を使った「かもロース」は1200円から。カウンターの中の良い色に煮込まれたおでんが食欲を誘う。カウンター席のほか、小上がり席、座敷の個室がある
赤垣屋/仏産の高級な鴨肉を使った「かもロース」は1200円から。カウンターの中の良い色に煮込まれたおでんが食欲を誘う。カウンター席のほか、小上がり席、座敷の個室がある

 品書きは旬の魚のお造りに始まり、名物のしめさば、かもロース、笹かれいや焼き鳥といった焼き物、煮物など約30品が並ぶ。加えて、通年で味わえるおでんが15種類ほど。価格が表記されていないため最初は戸惑うかもしれないが、1品あたり500~1500円目安とごく良心的なので、安心して味わえる。

 井上さんは言う。
「調理場に立つご主人親子のキリッとした佇まいがいいんです。俺の好きなカウンター席は予約ができないので、口あけを狙ってください」

 1日の疲れがフッと抜けるような居心地のよさがありつつ、ちょっと背筋を伸ばして飲みたくなる凛とした空気感は、この店ならでは。料理や酒の味はもちろん、格好のいい先客に酒場でのふるまい方を無言で教えてもらえるのも大きな魅力だ。

 井上さんが「下町名物で一杯飲むなら」と選んだのは、河原町八条にある食事処「糸ちゃん」。朗らかな女将さんと娘さんが中心になって営む、朝から飲める気軽な店だ。細め・太めのうどん、黄そば(中華麺)、そばと麺を選べるなべ焼きやカレーうどんなどの麺類、丼類が充実している。常連客から圧倒的な支持を受ける人気メニューは、「ミノ天」「レバー天」と呼ばれるホルモンのフライ。細かいパン粉を使った軽やかな衣に甘辛いソースがしみ、ビールやチューハイのお供にぴったりの一品だ。テイクアウトも可能だという。

糸ちゃん/普段使いでお昼を食べる地元の人も多い。ホルモンのフライは、ミノ天、レバー天各1個120円(注文は5個から)。甘めのだしに生姜が効いたなべ焼きは、卵、天ぷら、きつね、すじ肉か牛肉(選べる)が入る「全部入り」1000円
糸ちゃん/普段使いでお昼を食べる地元の人も多い。ホルモンのフライは、ミノ天、レバー天各1個120円(注文は5個から)。甘めのだしに生姜が効いたなべ焼きは、卵、天ぷら、きつね、すじ肉か牛肉(選べる)が入る「全部入り」1000円

「街中からは離れるけれど、わざわざ目指す価値のある一軒」と井上さん。ミノ天、レバー天には、別でもらえる辛いソースをかけて食べるのが井上さんのおすすめだ。

 そして、井上さん自身が「一人で気軽に行けるので長年週1くらいのペースで通ってます」と話す最後の1軒が、50年近く続く繁華街の人気店「龍鳳」。“京都中華”の発祥とされる伝説の店「鳳舞」や、その系列店「大一楼」で腕を磨き独立した店主が、新京極に構えた店だ。

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