「多くの人が『重力に逆らえない』という言い方をします。からだが重くて動けないと。もうひとつは『ブレインフォグ(brain fog)』とよばれる症状です。頭に霧がかかったようで、集中できない、物事を覚えられない、意思決定ができないなど、コロナ発症を機に明らかにパフォーマンスが低下したという人が多いです」(同)
そんな、後遺症に苦しむ人の最大の悩みは、周囲に理解してもらえないことだといいます。「甘えている」「もう治ったはず」「検査では異常なかったのでは?」。学校で、職場で、このような言葉に落ち込み、焦り、孤独感を持つ人は少なくないとのこと。
以前は学校生活、あるいは仕事や社会生活をふつうに送り、明らかに「さぼる理由が思い当たらない」という人が学校や仕事に行けない状況を目の当たりにする新見医師は、「コロナ後遺症という病気があることを、もっと社会に広く理解してもらいたい」と話します。
症状がどのぐらい続くかについても個人差が大きく、2、3週間で治る人もいれば、数カ月から1年以上も続く人もいます。
後遺症がない人、あっても短い人、長引く人、コロナにかかってからずっと不調が続く人、一度元気になってから再び具合が悪くなる人など、病態はさまざまで、なぜその違いが生じるのかもわかっていません。前述の通り、コロナ後遺症のメカニズムはまだ解明されておらず、そのような症状に対して、現在の医療での対応には限界があると新見医師は考えています。
西洋医学では、検査をして原因を探り、診断をおこない、その病名に対する薬を処方します。数千人規模の臨床試験に基づくエビデンスや診療ガイドラインなどの「正解」に沿って治療をおこなうのです。
しかし、コロナ後遺症にはまだ「正解」がありません。実際、コロナ後遺症に対する治療法は確立されておらず、多くの医療機関では、ほかの病気の可能性を排除した上で、症状をやわらげるための対症療法をおこなっています。