「『正解』はないけれど困っている人はたくさんいる。どうすればいいかと考えたとき、『正解』がないなら『納得解』を見つければいい、そのために漢方が役に立つと考えたのです。漢方薬はもともと病名に対してではなく、症状に対して処方をおこなうもの。病気のメカニズムがわからなくても、患者さんの症状や経過に応じて薬を選択することができ、しかも保険診療で処方できます」(同)

 同院は自費による診療が中心のため、コロナ後遺症の相談があった場合、まずは保険診療で漢方薬を処方してもらえる出雲漢方クリニック(島根県出雲市)の宮本信宏医師に紹介しています。出雲漢方クリニックはオンラインによる遠隔診療をおこなっており、全国の患者に対応しています。そして、保険診療による漢方治療でコロナ後遺症患者の8~9割の人が改善するといいます。

 新見医師が、コロナ後遺症に苦しむ全ての人に、まず処方したいと考えているのが「加味帰脾湯(かみきひとう)」です。心身の疲れや精神不安、虚弱体質、貧血、不眠などの改善に用いられる漢方薬です。

「コロナ後遺症の人の多くは、からだが思うように動かないことに加え、周囲に理解してもらえず精神的にも疲れています。まずはこれを飲んで元気になってもらった上で、ほかの症状に応じた漢方薬をプラスするといいでしょう」(同)

 例えば、倦怠感にはまず、胃腸の働きを整え元気を補う「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」、体力低下を伴う場合には、全身状態を改善する「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」を処方します。

 長引く微熱には、熱や炎症を抑える「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」、のどの痛みもある場合には、風邪症状に効く「葛根湯(かっこんとう)+小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)」を選択します。このように、漢方薬は症状に対して処方でき、ほかの症状を伴う場合や、効果がなかった場合などの選択肢が豊富にあります。

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