「住民が不安がっている。役所も政治家も知っているのに動かない。石井先生は『市民が困っているのを見て政治家が動かないというのは、日本の国が終わりということだ。それなら、自分で動いて反対運動をするぞ』と立ち上がった」
後にオウム真理教の施設は撤退を余儀なくされた。
石井氏は生前、統一教会について、筆者にこう話したことがある。
「オウム真理教は、殺人をも肯定する凶暴さ。統一教会は、教義、布教よりまずはカネもうけ。手法が実に巧妙でマニュアル化されており、オウム真理教よりもずっとやっかいだ。特に政治、自民党とつながっており、役所も遠慮がある。何か言うと、自民党の議員が出てくるからだ。そういうことを許してはいけない。統一教会とはもっと長い戦いになると感じるね」
石井氏は生前、段ボール箱で数百となる資料を残していた。大半が紙の資料で、筆者は石井氏の自宅に20日以上通い詰め、部屋に積まれていた段ボールを開けてチェックしたことがあった。石井氏が追及していた「道路公団」や「郵便局」の“闇”を探る資料には、うなるものがあった。
そういった大量の資料をデータ化する「石井紘基資料データベース化企画」がスタートする。そのなかには、旧統一教会についての詳細な資料も残っているはずだ。
今年10月25日、参議院議員会館で「石井紘基没後20年を偲ぶ会」が開かれた。与野党の国会議員らが訪れ、石井氏をしのんだ。
石井氏の長女、ターニャさんは、データベース化企画について、
「クラウドファンディングで広く募って進めたいです。データ化ができたら広く公開できないかと考えています。今も資料が役立つであろうことを、父も喜んでくれているはず」
と期待を口にした。
石井氏が筆者にかけてくれた最後の言葉を思い出す。
「しっかり追及して、いい記事書いてよ」
(AERA dot.編集部・今西憲之)