「地震は単体で捉えるのではなく、つながっていると考えるべきです。例えば、発生時期が近づいているとされる相模湾から千葉県沖に延びる相模トラフ沿いの海溝型地震が起きると、連動して三浦半島断層群や南海トラフも動く可能性があります。その逆も考えられます。そうなった場合、1923年に起きた関東大震災に匹敵するM8級の地震が、首都圏を襲うことになります」
人口密集地の真下にあるのが、「上町(うえまち)断層帯」だ。大阪市中心部を南北に横切る断層帯で、断層帯全体が一つの区間として活動した場合、M7.5程度の地震が発生するとされる。
大阪府が出した被害想定では、府全体で全半壊建物は約69万棟。200万軒が停電し、293万戸のガス供給が停止、死者は最大1万3千人に達する。
高橋特任教授は、こちらも被害はより大きくなる可能性があるという。
「上町断層帯の西側は、江戸時代まで海だった場所を干拓して陸地にした場所です。多くの住宅が立ち、地震による液状化のリスクがあります。さらに、地震の揺れは軟弱地盤を走って周辺の断層にも広がり、被害を拡大させることになりかねません」
富士山の西側を南北に走る「富士川河口断層帯」は、東西を結ぶ交通の大動脈である東海道新幹線や東名高速道路を横切っている。駿河トラフで発生する海溝型地震と連動して同時に活動するとM8程度の地震が起きるとされ、そうなれば全国の物流が大きなダメージを受けることは避けられない。
「核のごみ」が持ち込まれるかもしれない場所にも、Sランク活断層は存在する。
北海道寿都町(すっつちょう)から長万部(おしゃまんべ)町まで南北に約32キロにわたって延びる「黒松内(くろまつない)低地断層帯」だ。M7.3程度以上の地震を引き起こす可能性があるとされている。
寿都町は20年、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の第1段階となる文献調査に応募。経済産業相から認可を受け、全国初の文献調査が続いている。
北海道大学の小野有五(ゆうご)名誉教授(環境地理学)は、黒松内低地断層帯の存在などを根拠に、寿都町に核のごみを持ち込む危険性を指摘する。