飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。宮城県在住のユウナさんの愛猫は、ちょっと“ワケアリ”の子ばかり。どの子もユウナさん家族にとってかけがえのない存在です。今回は、生まれつき脚が悪い、とびきり優しい元捨て猫の話を中心に伺いました。
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現在、私は夫と息子と6匹の猫と暮らしています。どの猫にも背景とドラマがあります。
福島の原発地域の保護施設から迎えた17歳の「あかにぃ」、宮城で保護した10歳の「ナギ」と「あずき」、重い肝臓病を患って捨てられた2歳の「楓」、保護主から託されてすぐ瀕死(ひんし)状態になり、目に障害が残った1歳の「珊瑚」、そして前脚の悪い14歳の「カムイ」。
その中で今回、聞いてもらいたいのはカムイのことです。生まれつき左の前脚が右の前脚に比べて短い(半分くらいの長さの)雄猫で、胎児の時に何らかの理由で“左前脚が後ろ脚の形になった”ようです。いわゆる奇形ですが、猫では通常死産することが多いそうです。背骨も曲がり、両前脚の親指の爪もありません。
ひょこひょこと、3本の脚で他の猫よりゆっくりと歩くカムイ。でもカムイのことで私が最も伝えたいのは障害のことではなく、性格のことなのです。
カムイと出会ったのは、14年前の夏。福島に住むブログ仲間から「会社の前に子猫が4匹、段ボールに入って捨てられている」と聞き、息子を連れて会いにいきました。
息子は当時、小学生でしたが、友だちとのコミュニケーションがうまく取れず、不登校でした。その心の支えになればと思い、我が家に子猫を迎えたいと思ったのです。
カムイははじめ、1匹だけ少し離れたところにいましたが、こちらに気づくと、とてもゆっくり歩いてきました。そして息子の靴に、前脚をちょんと乗せたのです。すると息子はカムイをそっと抱き上げて「この子がいい」と。
息子が選んだというより、カムイが息子を選んだみたいな不思議な気がしました。