個人的には、この点こそが飼い殺し防止という理念を形骸化させる最大の問題点だと思う。例えば現役ドラフトで移籍した選手には翌年のベンチ入り最低試合数を設定するなど、新天地でのアフターフォローはあってしかるべきではないだろうか。
戦力を落としかねないだけに現場からは反対の声も出るだろうが、だったらそもそも現役ドラフトなどする意味がない。導入するからには、このドラフトで移籍した選手が新天地できっかけをつかんで活躍したという成功例を可能な限り早く現実のものにしなければならないはず。でなければ過去に数年間で消滅した「選抜会議(各球団が選手の2割を金銭トレードの対象としたもの)」や「セレクション会議(プロテクトされた1軍枠と若手枠をのぞいた選手のトレードを各球団が話し合うもの)」のように形骸化からの自然消滅は免れ得ないだろう。
導入初年度だから多少の不備は仕方ない、徐々に改善していけばいいというのは正論ではあるが、この現役ドラフトで野球人生が変わってくる選手は確実に出る。その変化をより良いものにしていくために関係各位にはスピード感ある改革をお願いしたい。(文・杉山貴宏)