しかし、本流の報道部からは社内会議で「あれはジャーナリズムではない」という批判もうける。就職のインターンシップで、学生に向かって、そう言ってしまう報道部員もいる。「サツまわりこそ新聞記者だ」という意識なのだ。

 本紙の紙面は、それぞれの地域版が5面あり地域の話題を、そして社会面、一面では県庁、県警からの発表等の発生ニュースが紙面を埋める。しかし、これまでのような発生ニュースを掲載するだけの紙面では、デジタルの有料会員も伸びず、限界は見えている。

 大分合同新聞の電子有料版は紙とまったく同じニュースしか流していない。この契約を伸ばすためには、まず中身を時間経過に耐えうるコンテンツに変えていく必要がある。現在、報道部、地域報道部は52名。県のすべての発生ものをカバーしようとする限り、本紙の内容を時間経過に耐えうるような、そこにしかないコンテンツに変えていくことは不可能だ。

 編集局長の下川宏樹は「それでも、発生ニュースを地方紙が追うことは必要だ」と私に語ったが、報道部も「変わらないために変わる」必要がある。

「GX PRESS」はそこに風穴をあける新しい流れのように見える。

下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。

週刊朝日  2023年3月10日号