GX
GX PRESS編集部で。右から編集長の木本崇(2代目)、記者の中村みを、デスクの佐藤栄宏。

「大学を卒業してから、新聞社を継ぐという運命をできるだけ先のばしにしたかった」

 そうした長野だったため、入社してからは、他の役員や父親とのコミュニケーションに苦労をした。デジタルが重要だといくら役員会で主張しても、まったくわかってもらえない。

 このころから考えていたのは、夕刊の休刊だった。

 朝夕刊完全セットでやっている地方紙は、大分合同以外に2紙しかなかった(静岡新聞・東奥日報)。父親の世代の役員たちは、夕刊こそ大分合同新聞と、休刊にふれることはタブーだった。

 が、2016年に長野が社長になると、販売のほうから「人員が足りず土曜の夕刊が配れない。土曜だけでも休刊にしてくれないか」という提案が執行役員会にあり、休刊を決断する。

 しかし、ただ休刊にするだけでなく、新しい媒体をつくることを下に打診し、そこからあがってきたのが、「GX PRESS」のコンセプトだった。

 日々のニュースを報道してきた夕刊とはまったく違う。ビジネス(火・金)、エデュケーション(月1回)、おでかけ(月2回)と、分野をきめて毎回深掘りの特集を掲載する。タブロイド判で朝刊にはさみこむ形で家庭に届けられる。

 編集部をつくる際には、あえて編集部門から編集長を起用せず、広告部門から選んだ。他にも販売などの編集以外の部署からも人材を登用し、混成部隊の編集部の陣容は現在14名。

 この「GX PRESS」は新聞にはない自由な企画が掲載される。たとえば私が大分にいた2月21日には、入社4年目の20代の女性記者の企画で、「男だってメークしたい」と男性のメーク術とビジネスシーンでの応用について巻頭3ページの特集をつくっていた。

 特筆すべきは、この「GX PRESS」は、時間の経過に耐えうるコンテンツを目指していることだ。たとえば編集部は大分のスタートアップに資金が集まらないことに注目し、どうすればファンディングができるか、そうした課題解決型の報道にもとりくむ。編集部の記者は記者クラブに属していない。

次のページ