「私が受け入れ責任者をすることになりました。クロアチアサッカー協会元会長のダボル・シュケルさんは、そのときW杯の代表選手として、うちの施設で練習していたんです」

 川崎さんによれば、当時はクロアチアがどんな国かもさっぱりわからないまま、受け入れ責任者として駆け回った。

「W杯が終わった後、会社から休みをいただいたので、クロアチアへ旅行に出かけました。クロアチアサッカー協会の人たちとゆっくり地元のワインを飲みながら、いろんな話をしたんですね」

 そんなある日、酒を交わしながら川崎さんは、自分が心に抱いていたことをふと話した。

「将来は飲食店をやってみたいんです」

 すると、クロアチアサッカー協会の幹部から、

「それなら、日本でクロアチア料理店をやってみなよ」

 と勧められた。

「そのときはジョークだと思っていたんですが、クロアチアから帰国したら急に、『人生は一回だし、それもいいかな』と思うようになりました」

 帰国したのは02年8月。その4カ月後の12月には、東電に退職届を出し、翌年に「Dobro」を出店した。

 日本からクロアチアへの直行便はない。日本人から見て、遠い異国であるクロアチアの空の下、川崎さんは、自分を変える“何か”を感じとったのだろうか。

「初めてクロアチアに行ってみたら、すごくいいリゾート地だったんですよ。そしてまた、人々が親日なんです。旧ユーゴスラビアから独立した国の中で、いいとこ取りしているのがクロアチアなんですよね」

 90年代から、クロアチア、スロベニア、北マケドニア(現在)、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロが独立し、ユーゴスラビアは消滅した。

 クロアチアは地中海の海域の一つであるアドリア海に面し、イタリアの対岸に位置する。

「自然豊かで、海側だから海の幸も豊富ですし、内陸部にもいろいろな料理がある。ヨーロッパのいろんな国を訪ね歩いて、それに飽きた人たちがリピートする国でもあるんです。アメリカのハリウッドスターやセレブがお忍びでクロアチアのリゾートに滞在しているとも聞きます」

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