最初の段階でパスがつながらず、相手の連続攻撃を受けることになったため、ボールを保持がままならなかった。ドイツ戦やスペイン戦に比べてクロアチア戦では持てる時間もつくったが、それでもまだまだ保持率は低かった。ポゼッションが勝敗を決めるわけでないものの、押し込まれる時間が長ければ長いほど、それだけ失点のリスクも増し、攻撃機会も失われる。ボールを握る力をつけなければ、主体的に試合を運ぶことはできない。
ただ、この点については注意が必要で、過去の経験から学ぶ必要もある。守備に軸足を置いて戦った2010年の南アフリカ大会後、多くの選手が同じように主導権を握る戦いの必要性を訴え、ザッケローニ監督のもとでそのスタイルを磨き、2014年のブラジル大会に向かった。しかし掲げていた「俺たちの戦い」は結局、本大会で通用せず、結果は惨敗に終わった。
振り子が揺れるように対照的なスタイルの間で大きく揺れながら日本代表は歴史を重ね、一歩ずつ成長してきた事実はある。しかしながら南アフリカからブラジルに向かったときのように、ただ理想を掲げて突き進むだけでは教訓は得られても成果は得られない。
今大会で日本は次のフェーズに進んだことを示した。次回はもっと高い視座から「ベスト8以上」を目標に掲げ、戦うことになるのだろう。日本協会がいかに今大会を総括し、いかなる日本代表の強化プランを立てるのか。4年後へ向けて、その点が極めて重要なポイントになる。
(文/佐藤 景)