
1対1でわたり合う個の力はこれからもますます伸ばしていくべきであり、意思統一された中で戦術を遂行する力も継続的に持ち続けるべきものだ。チームのために守備に力を割く献身も、粘り強く守り続けられる力もまた、今回日本が示し、継承すべき武器だと言っていい。
02年の日韓大会ではラウンド16でトルコに早々に先制され、堅く守るトルコに沈黙するしかなかった。06年のドイツ大会ではオーストラリア相手に先制しながらリードを守り切れず逆転負けを喫した。14年のコートジボワール戦も同じで、先制したものの逆転負け。18年のロシア大会でもラウンド16でベルギーに2-0とリードしながら最後は2-3と試合をひっくり返された。ロングボールに耐え切れず、ズルズルと交代して結局、力尽きたのだった。
だが、今回はドイツにもスペインにもリードされたあとに追いつき、逆転し、自らリードを奪ったあとに攻撃を受けても崩れなかった。積み重ねた経験を、着実に成長につなげてきた。ラウンド16のクロアチア戦は、PK戦の末に敗れることになったものの、後半も延長に入ってからも守勢に回りながら耐え抜いた。押し切られない力をそこでも示してみせた。
■「ベスト8」に必要なこと
優勝経験国に対しても、やり方次第でわたり合える。日本が今大会でそのことを証明した。もちろん、いわゆるサッカー大国との差がこれで完全になくなったわけではない。ただ、試合に臨む際の状況を整理し、コンディション調整や戦略も含めてしっかり準備を整えれば、少なくとも大国に対してまったく歯が立たないということはなくなったのではないだろうか。
7大会連続7回目の出場という実績を積み、中堅国としての地位を確立した。これからの日本は、ベスト8、それ以上の高みをより現実的な目標ととらえて歩き出すべきだろう。そのために必要なことは何なのか。
ヒントは、すべてを懸けて4試合を戦い終えた指揮官、選手たちの言葉の中にもある。
「ロシアワールドカップの反省で、リードしてる中、ポゼッション率が下がることで押し込まれてしまい、最後に試合を持っていかれるという部分がありました。体力的に疲弊して最後まで戦えないところも反省点で、常にそのポイントを意識してきた中、今日の前後半もそうですけど、保持率はわかりませんけど、守備から攻撃になるたびに、つなぐ意識があるかというのが大切でした。選手たちはよくやってくれたと思います。今のベストを尽くしてくれた。そのつなぐというのが効果的な攻撃につながり、試合のコントロールにつながっていくということについては、これから先レベルアップを考えなくてはいけないところだと思っています」(森保監督)