今季惜しくも2位となった川崎は、インサイドハーフでも起用可能な万能FW瀬川祐輔(湘南→川崎)に加えて、右CBと右ウイングバックをこなすDF大南拓磨(柏→川崎)、足元の技術の高い攻撃的GKの上福元直人(京都→川崎)を獲得したが、いずれもバックアッパーの域を超えず。今季7得点の知念慶(川崎→鹿島)の流出の方が気になり、日本代表DF谷口彰悟も海外移籍のためにチームを退団した。大学生1人(山田新)とユース昇格2人(大関友翔、松長根悠仁)、高体連1人(名願斗哉)のルーキー組の成長によって若返りを図りたいところだが、まだ来季へ向けたワクワク感はない。今季は2位と3位以下の間に勝点10以上の差が開いたが、鹿島、柏、FC東京の“第2集団”の積極補強で、戦力値の差は間違いなく縮まったと言える。

 下位チームの中では、今季14位と辛くもJ1残留を果たした福岡が好感触だ。J2で今季13得点を挙げた地元出身の23歳FW佐藤凌我(東京V→福岡)の獲得成功が朗報で、独特のリズムを持つ左利きのドリブラーであるMF紺野和也(FC東京→福岡)も期待できる。外国人勢はデルガド(福岡→長崎)、クルークス(福岡→C大阪)がチームを離れ、ルキアンはどうなるかは気になるところだが、獲得オファー報道のあったDF松原后(磐田)を獲得できれば大きい。

 今季12位で終わった湘南は抜け目がない。FW瀬川祐輔(湘南→川崎)を失ったが、右サイドを切り裂きながら攻守にハードワークできるMF小野瀬康介(G大阪→湘南)を獲得し、レンタルの立場だった阿部浩之と杉岡大暉を完全移籍への移行に成功。何より、流出の噂が絶えなかったエースFW町野修斗の残留が大きい。守護神GK谷晃生の退団が濃厚だが、韓国代表GKソン・ボムグン(全北現代→湘南)の獲得を発表。全体的にポジティブなオフを過ごしている。

 今季11位の鳥栖は、ボランチの位置から今季J2リーグ最多の12アシストを記録した河原創(本→鳥栖)、同じくJ2から今季11得点を決めたFW富樫敬真(仙台→鳥栖)、球際に強い26歳のDF山崎浩介(山形→鳥栖)、さらに傑出したドリブル能力を持つMF樺山諒乃介(山形→鳥栖)らを獲得。レンタル中だった岩崎悠人の完全移籍移行も大きい。だが、MF小泉慶(鳥栖→FC東京)、DFジエゴ(鳥栖→柏)とチームの中心だった2人が他クラブへ移籍したことがどう響くか。獲得リストだけを見ると「楽しみ」だが、放出選手の名前を見ると「不安」もある。

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その他で“勢力図”に影響を与えそうな移籍は?