なんとも慌ただしい年末だ。第210回臨時国会は会期末の12月10日、約29年ぶりに土曜日の国会審議となった。理由は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題をめぐる被害者救済新法を会期内に成立させるためだった。
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同法案は8日の衆議院消費者問題特別委員会で、寄付の勧誘相手の自由意思への配慮義務が守られなかった場合に、当該法人への勧告や法人名の公表をできるようにし、施行後の法見直し時期を3年後から2年後に短縮した。
また、立憲民主党と日本維新の会が求めた通り、配慮義務規定に「十分に」の文言も加えた。こうして衆院を通過した同法案は、その日のうちに参院で審議入り。10日に本会議で賛成多数で可決し、成立した。
もっとも、厳しい日程について、政府・与党は一時は会期延長も考えた。しかし、国民が旧統一教会問題を最も注目している以上、政府提出法案である同法案を早期に成立させなければならなかった。そのために委員会と並行して4党実務者協議や、共産党を含む4野党との幹事長会談を行った。
同法の成立を誰よりも急いだのは岸田文雄首相に違いない。この臨時国会で山際大志郎経済再生担当相、葉梨康弘法務相、寺田稔総務相(いずれも当時)を更迭し、さらに「政治とカネ」問題に加え、旧統一教会関連団体との関係が取りざたされた秋葉賢也復興相の問題がくすぶっていた。
同じ国会で4人もの大臣を罷免(ひめん)すれば、政権崩壊の危機である。
実際に第1次安倍政権では、第166回通常国会で農林水産相だった松岡利勝氏が自殺し、後任の赤城徳彦氏も事務所費問題で辞任。久間章生防衛相は「原爆はしようがない」発言で内閣を去った。
同年7月の参院選で自民党は大敗し、安倍晋三元首相の持病が悪化したこともあって、第1次安倍政権は崩壊した。その点、岸田首相の場合、2021年に衆院選、22年に参院選が行われたため、岸田内閣はしばらくは国政選挙の“洗礼”は受けなくてよい。唯一の懸念は内閣支持率だ。