この問題は高市担当相がツイッターで公表したため騒動になったが、15日の税制調査会で増税のタイミングを「令和6(2024)年以降の適切な時期」と先送りし、16日に岸田首相が各閣僚に説明を行ったこともあり、とりあえずは沈静化した。
こうした岸田首相の政治姿勢を、日本共産党の志位和夫委員長は16日の会見で次のように述べている。
「安倍(晋三元首相)さんは日本を海外で戦争ができる国にしようとした。そのためには安保法制を強行し、秘密保護法を作り、共謀罪も作った。一連の法律はみなそうだが、彼は信念の下でやってきた。私たちにとっては間違っているが、それなりの信念だった。しかし岸田さんには、この国をこうしたいというビジョンのようなものは感じられない。持っていないのではないかと。では彼の行動原理は何かというと、保身ではないか。政権の延命に役立つことなら何でもやる」
16日には「反撃能力」の保有を明記した防衛3文書も閣議決定されたが、その評価を「懸念」から「挑戦」に“格上げ”された中国は猛烈に反発。中国外務省は「理不尽な汚名」と抗議し、中国共産党の機関紙・人民日報系の「環球時報」はその社説で、
「日本が中国を脅威とみなすなら、逆に中国が本当に日本の脅威になるぞ」
と脅した。ウクライナ紛争はいまだ収まる様相を見せず、尖閣近海で中国艦船が常に姿を現している現状は、23年に入っても続いていくだろう。その状況をけっして器用ではない岸田政権が、果たしてどのように対処するのか。財源をめぐって紛糾した防衛費増額問題は、まだ終わったわけではない。
(政治ジャーナリスト・安積明子)
■あづみ・あきこ 政治ジャーナリスト。兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)