社会科の森谷陽子先生は、出題の背景を次のように話す。

「小学校の知識に、自分なりの考えをプラスできないかと考えました。日本は工業製品の輸出では知られていますが、農作物の輸出はあまり知られていません。そこに目をつけました」

 亜熱帯、熱帯地域の台湾ではりんごが生産できないこと、また赤や黄色を縁起が良い色として尊ぶ中華圏の文化など、いろいろな角度から考えられる問題だ。

「たまたまでしたが、東大とかぶったのはうれしかったですね」(森谷先生)

■入試は1日目の授業

 後藤さんは入試を「1日目の授業」と称する。

「先生方は入試を、ただの選抜だとは思っていません。入学してから伸びてほしいと思う、指標でもあるんです」

 大妻多摩の森谷先生は言う。

「地理は、覚えなければいけないことが多くて苦手意識を持つ生徒が多い。でも修学旅行に行くと主体的に学習します。社会科は生活に密着した教科です。関心を持って、情報を受け入れるだけでなく、発信もできるようになってほしいのです」

 冒頭の公文国際は、公民で新聞記事を使った授業を行っている。同じテーマを扱った複数の新聞記事を比較し、視点の違いなどを生徒が話し合う。22年度の東大推薦入試で、同高校の原田怜歩(はらだ・らむ)さんが合格した。在学中に行った「LGBT(性的少数者)にとってのトイレ」についての研究が評価された。

「社会科の教員は、社会問題に関心がある生徒を育てたいという思いがある。そういう影響があったのかもしれません」(渡辺先生)

 これからも思考型、読解型の入試は広がりそうだ。後藤さんは対策として、多くの人と話をすることが大切だと話す。

「同じニュースを見ても、立場の違いでいろいろな考えがあります。いろいろな人と話をして違いを知り、それ対して自分はどう思うのか考える習慣を身につけましょう」

(ライター・柿崎明子)

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