「従来型の知識を問う問題も出されるので、中学入試の学習は必要です。ただ最近は細かな知識を問うよりは、その場で考えさせる問題や、文章で表現するような問題を出題する学校が増えてきた印象です」
後藤さんが「重箱の隅」をつつくような知識問題として挙げる過年度の難問例は「静岡県内の東海道新幹線各駅停車の西からの駅名」「タシケント(ウズベキスタン)の雨温図」「十字軍の遠征が世界に与えた文化的な影響」など。後ろの2問は中高校生レベルの問題ではないだろうか。
一方で、「資料として提示されたガイドブックを読み取り、旅行の計画を立てる」(清泉女学院)、「自分が日本代表の監督だったら消化試合をどう捉えるか」(慶応湘南藤沢)など、知識だけにとどまらない自身で考えるような問題が出題されるようになったという。
超難関校では以前から、深い考察を必要とする問題が出されてきた。たとえば灘や筑波大付属駒場の国語で出題される「詩」の問題は、受験生を戦々恐々とさせている。
「詩の形式を問うような学校もあるのですが、灘や筑駒は本質的な読解です。詩のような短い文章からは、その行間も読み解かなければならず本当に難しいのです。筆者が言葉に表さなかったことまで理解して、言葉に落とし込む。いわば芸術的な行為であるとすら思います」(後藤さん)
■数学者の定理が出題
明星学園の算数の最終問題では、「ユークリッドの互除法」「ヴェーダ数学」「カプレカ数」「オスターリー・マッサー予想」など、過去の数学者の定理が出題されたこともある。定理についての詳しい解説がなされ、それを読み解けば問題を解けるようになっている。本物の数学を知ってほしいという、教員の意気込みが伝わってくるようだ。
大妻多摩では22年度、東大と同じテーマの問題が出題された。大妻多摩の「日本のりんごが高価格であるにもかかわらず、台湾が日本のりんごを輸入するのはなぜだと思いますか」に対して、東大は「りんごの輸出量が増加している理由として図から考えられることを、2行以内で説明せよ」と、両校ともに日本の果物の輸出が伸びていることに着目。