子宮腺筋症データ
子宮腺筋症データ

■薬が合わなくてもほかの薬を試せる

 薬物療法の利点について、ミズクリニックメイワン院長の小林浩医師はこう話す。

「薬物療法により痛みが軽減されると、QOLはかなり改善されます。生理痛がひどくて仕事に行けなかった人が行けるようになるなど、生活が劇的に変わったと喜ぶ患者さんも多くいます」

 低用量ピルは、血栓症のほかに吐き気やむくみなどの副作用が起こることがあり、服用を継続できない人もいるが、あきらめることはないと手稲渓仁会病院産婦人科部長の福士義将医師は話す。

「低用量ピルにも複数の種類があり、含まれるホルモンの量や種類が異なります。飲んでみて合わない場合、薬の種類を変えることで継続できることもあります」

 GnRHアナログ製剤による治療は、ホルモンの状態を閉経時と同じようにすることで症状の改善を目指すもので、「偽閉経療法」ともいわれる。ただし、骨粗鬆症のリスクが高まるため、使用できるのは6カ月間という制限がある。手術をするまで、あるいは閉経までの「逃げ込み療法」として短期的に使われる。

 ほかに、子宮内に入れた専用の器具から黄体ホルモンが放出される「子宮内黄体ホルモン放出システム」という治療もある。

「一度挿入すると5年間効果が継続され、月経痛や過多月経の症状を緩和するには有用ですが、子宮が大きい場合など、まれに器具が自然に排出されてしまうことがあるので注意が必要です」(福士医師)

 手術については、子宮腺筋症の病変だけを切除する「子宮腺筋症核出術」と、子宮全てを摘出する「子宮全摘術」があり、子宮腺筋症核出術は慎重な検討が必要とされている。

「子宮筋腫の治療では、筋腫だけを切除する子宮筋腫核出術という方法があります。ただ、腺筋症は筋腫のようにクリアカットな境界がなく、100%切除することが難しいことがあります」(小林医師)

 希望する場合は、医師とよく相談することが大切だ。

 子宮全摘術は、現在では多くの病院で腹腔鏡による手術が可能となっている。

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