だからこそ、介護には、何らかの意味づけ、自分なりの価値が必要になってくるのです。しかし、子どもだから、親だからといういわば社会的な役割による意味づけは、ゴールの見えない介護の継続のなかで容易に色あせて、あなたは進むべき道を見失ってしまうのです。

■一人で抱え込むと、親への虐待につながりかねない

 長く続く介護生活のなかで、介護の意味や意義を見失って迷子になるのは、当然のことです。それはあなたが親不孝だからでも薄情だからでもありません。そもそも人生百年時代の介護は、私たちの世代が初めてのことなのですから、今を生きる私たちならではの戸惑いといえるでしょう。

 とにかく一人で抱え込まないことです。心に疑問や不満を抱いたままでは、親に対してきつい言葉を投げてしまったり、無視したり、悪くすると虐待につながりかねません。

 ためらわずに、私たち介護のプロに打ち明けてください。ヘルパーでもケアマネでもかまいません、話しやすい人、気をゆるせる人に、グチのついでに話してみてください。

 私たちはまず話をよく聞いて、具体的な悩み、つまり経済的・時間的・身体的な問題から解決を試みます。たとえば、ここのところ母親の排せつの失敗が続いている、父親に何を言っても「イヤだ」の一点張りになったなど、改善可能なことが悩みのきっかけになっていることも多いからです。

 親の状態が悪くなったり、気持ちがぶつかり合って介護がスムーズに進められない場合には、介護スタッフがその原因を探り、効率的で効果的な対処法を見つけ出します。気持ちの面では、ヘルパーやケアマネという第三者が間に入ることで、親御さんも素直に妥協してくれることも少なくありません。それでも頑固な態度を崩さない場合には、「介護のプロでも説得できないんだから、私ができないのは当たり前。私のせいじゃなかったんだ」と、自分を責める必要がないと思えるようになります。

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