子宮筋腫と同様に、女性ホルモンの影響を受ける病気のため月経がある間は自然に治ることはなく、治療しても再発することが多い病気です。福岡山王病院リプロダクションセンター部長の江上りか医師はこう話します。
「初経が早かった人、初経から出産までの期間が長い人は内膜症になりやすいといわれています。初経年齢が早かった人、晩婚化などで出産が遅くなる人や少子化で妊娠の機会が少ない人が増えていることで、子宮内膜症の患者数も増加傾向にあります。月経のある年月が長いほど発症リスクが高まり、重症度も高くなるため、早期発見して薬物療法などで重症化しないよう治療していくことが重要な病気です」
■子宮内膜症と不妊、卵巣がんのリスクとは
子宮内膜症が卵巣にでき、古い血液が排出されずにたまると「チョコレート嚢胞」とよばれる袋状の病巣ができます。チョコレート嚢胞と卵管が癒着することなどにより、子宮内膜症があると妊娠しにくくなります。
「卵管の癒着で卵子の通り道がふさがれたり、卵子をキャッチする機能が低下したりする可能性があります。内膜症ができることで卵巣の機能が低下することに加え、慢性的な炎症により腹水がたまり、免疫細胞が増えることも妊娠を妨げる要因になるといわれています。手術をすると、さらに卵巣へのダメージを重ねてしまう可能性があるので、妊娠を希望する人は薬物療法で内膜症の進行や増殖を予防します。そして症状が改善し妊娠可能な時期がきたらなるべく早く妊娠できるよう、必要に応じて不妊治療を受けることが望ましいでしょう」(江上医師)
また、チョコレート嚢胞があると、卵巣がんの発症リスクが高まるともいわれています。ただ、「全てががん化するわけではない」と木村医師は指摘します。
「40歳以上の人で10センチを超えるチョコレート嚢胞がある場合、0.7%の人が卵巣がんを発症するという報告があります。1千人に7人ですので、リスクがとても高いというわけではなく、きちんと経過を観察していけば心配しすぎることはありません」