患者宅での滞在時間は平均10~15分で、一日に訪れる数は50件を超えることもある。
「一人暮らしで高齢者、そして足が悪い人にとって、発熱外来に行くことは困難です。公共交通機関が使えないうえに、第7波のときは一部の発熱外来で1時間以上、外で待っていたという患者さんの話を聞きました。第8波の今は真冬です。外で待つなんて危険すぎます。何かあったら誰が責任を取るのかと思う。そんなところに僕らの需要があるんですよね」
田中医師はそう話し、続けた。
「お金になるからと思って始めたものの、今ではそんな意識は薄れています。いまでは、ひたすら目の前の診察をこなすだけです。重症化になる一歩手前の人などを何十人、何百人も救って『ありがとう』と声をかけられると、やりがいを感じますね」
この日、翌朝にかけて田中医師が訪れた訪問先は15件。まともな食事は取っていない。
「待機所にある別部屋のスタッフが買ってきたコンビニ弁当を食べることが多いです。基本、往診時は食事を取りません」
すべての診察を終えて、自分の部屋に着いたのは午前7時を回っていた。
●機能しない分科会 ワクチン接種率を高める打開策が必要
昨年10月から緩やかな増加傾向にあった第8波は、12月に入ってから感染速度を上げ、東京都では1月に入り、感染者が2万人を超える日が続いた。
旅行会社大手のJTBの推計によれば、12月23日から1月3日までの国内旅行者数は、前年比16.7%増で2100万人に上ったという。全日空によれば、国際線の予約数は前年度比で5倍以上増え、13万6253人に上った。
東京都は今月初めに、新型コロナの感染状況について、分析結果を公表した。医療体制については、年末年始も一日の入院患者が4千人を上回り、増加傾向が続いているなかで、感染拡大により就業制限を受ける医療従事者が増えており、医療体制は最も深刻なレベルにあるとした。