「異常ないね。良好だよ。あと3日頑張って。今日は寒いから風邪引かないようにね。何かあったらすぐ電話するんだよ」

 田中医師は女性にそう語りかけて家を出た。

 診療を終えた田中医師は車内に戻り、ビデオ通話で本部に患者の症状などを報告した。このビデオ通話は業務時間中ずっとつながっている。診察結果を伝えるほか、本部から診療の要請が入る場合も多い。

 毎日多くの患者と接している。自身が感染するリスクはないのだろうか。

「十分にありますよ。ワクチン接種はもちろん、マスクもつけてますが、万が一がある。だからあまり家に帰らないようにしてますし、仕事以外は外に出歩かないように心がけています。第6波の時は、家に3カ月ほど帰れませんでした。娘の受験期間中はうつさないようにするため、ずっと立川の待機所に泊まっていましたね」

 昨年は、国内の一日ごとの感染者数が第6波で初めて10万人を超え、第7波では20万人を超えた。

 田中医師が振り返る。

「第7波の時も帰れませんでしたが、何より薬不足に陥りました。解熱剤とせき止めがなくなりかけたのです。ワクチンの接種回数が少ない人ほど症状が重かったです。そこに疲労がたまっているとさらに悪化します。往診ドクターも診られる範囲に限界があり、かなりの重症化ですぐ入院が必要だと感じたら、病院と救急車と連携して、搬送の準備をします。ただ、医療体制が深刻なレベルにあると、緊急搬送できないことがほとんどです」

 サービスを提供する「ナイトドクター」(東京都港区)は、常時数人のスタッフが本部で電話を受けている。医師の待機場所は立川市内にあり、現場を担当する10人ほどの医師が、そこから依頼を受けた家に向かう。

 休日問わず、夜間は365日往診し、PCR検査は24時間いつでも出張する。コロナの陽性者については、夜間以外にも往診するケースもある。往診サービスを利用するのは、外出が不自由な高齢者が多いという。

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ひたすら目の前の診察をこなすだけ