心室頻拍や心室細動の70~80%は、心筋梗塞や心筋症、重症心不全など、ほかの心疾患が原因となる「二次性」のものです。原因となる心疾患のないものは「特発性」とよばれ、30~50代の男性に多くみられる「ブルガダ症候群」などがありますが、患者数はそれほど多くありません。
■デバイスを植え込んで頻脈発作を抑える
一度でも心室頻拍や心室細動による不整脈発作を起こしたことのある人は、次の発作で心停止につながるリスクがきわめて高い状態にあります。さらに次の発作がいつ起こるのかもわかりません。
そこで、最初に考慮される治療が、デバイス(医療機器)を胸部に植え込むペースメーカー治療です。
おもに「ICD(植え込み型除細動器)」が用いられます。「除細動器」と名前にあるとおり、AEDと同じ機能をもったデバイスです。鎖骨の下あたりにデバイス本体を植え込み、そこから伸びるリード線(電線)を、静脈を通して心臓に入れます。頻脈発作が起きたら、心拍のリズムを元に戻す「抗頻拍ペーシング機能」で発作を抑えます。それでおさまらなかったら、電気ショックを与えて、強い力で心拍を戻します。聖マリアンナ医科大学病院循環器内科教授の原田智雄医師は次のように話します。
「とくに失神してAEDを用いて蘇生したようなケースでは、ICDの植え込みをすすめます。次の発作時に突然死につながるリスクが非常に高いからです。ICDは抗不整脈薬などの薬物療法よりも生存率が高いことがわかっています」
ICDの電気ショックが作動すると心臓に大きな負担をかけ、心機能の低下をまねくリスクがあります。そのため、デバイスを植え込んだあとも心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)や抗不整脈薬で、頻脈が起こらないための治療を続けます。
■脳梗塞のリスクが高い【心房細動】
放置すると脳梗塞のリスクが高くなるのが心房細動という不整脈です。心房細動は左心房に起こりやすく、心筋が異常なけいれんを起こします。心房細動は、発作が7日以内におさまる「発作性」、7日以上持続する「持続性」、1年以上続く「長期持続性」に分けられます。自覚症状として動悸や胸の違和感などがあげられますが、まったく無症状のこともあって、多くは健診で持続性の心房細動を指摘されて見つかります。